輝いて 三重中央医療センター 下村 誠院長 (62)

 真に地域から信頼される病院を目指して

 2019年4月、「地域の医療機関からの選ばれる病院になる」「 地域の住民から選ばれる病院になる」「 医師から選ばれる病院になる」という3つの目標を掲げ、三重中央医療センターの副院長に就任。2022年4月からは同院院長に就任した。
 4月10日、新救急外来棟がオープンした。「当院の救急車受け入れ件数は2009年が2000件台でした。それが2023年は5612台まで増加。心筋梗塞や脳卒中などの3次救急も受け入れているので、特に寒い季節には肺炎やインフルエンザに混じって脳卒中や心筋梗塞が来て、1日に50件以上の患者が押し寄せる日もあり大変なんです。古い救急室は、非常に狭く初療スペースはベットが2台のみで、救急室はいっぱいいっぱい。新しい救急棟は広くなって、非常に動きやすくなりました。スタッフもCTが棟内にあるんですぐに撮影できるのがいいって言ってますね。初療室と臨接しているので、CTを撮影しながら、他の患者さんのケアもできる。非常に機能的に診られるようになったので、患者さんを裁くのが結構早くなるんじゃないかと思います。何よりも患者さんが楽ですよね。」
津市の救急体制は救急車が現地で病院を選定するのに30分以上かかるケースが三重県内で一番多い、という問題をかかえている。その問題を何とか解消したいと就任以来画策してきた。
2022年には救急専門医を招聘し、救急科を新設。「副院長時代から救急患者の受け入れを担当する若手医師を増やすため初期研修医の獲得を目指しました。救急の専門医から研修医が、直接指導が受けられる病院って意外と少ないんですよ。研修医は救急のいろんな経験を積みながら医者として成長していく。救急患者を多く受け入れることで、たくさん学べる病院であることをアピールし、研修医の確保に努めた。救急専門医が来てからは、研修医の間ですごくうちの病院の人気が上がっています。来年は研修医の数を8人から10人に増やします。スタッフが増えることでさらに多くの救急患者を受けれるようになった。新救急外来棟が出来たことで、更に良い循環を生むんじゃないかなと思っています」。研修後も同院に残る医師も増えてきているという。
問題は看護師の不足。コロナ患者を積極的に受け入れてきた。その時の激務で看護師の離職率がかなり上がり、スタッフがガタッと減った。2023年4月~9月まで、一時病棟への入院を制限しなければいけない時期があった。
コロナ禍でスタッフ同士のコミュニケーションが取れなくなっていることにも問題があると考え、昨年は各部所内での飲み会を奨励し7月ビアガーデンで全員懇親会をした。
文化祭などのイベントも復活させた。「たくさんの市民の人に来ていただいた。苦しい時代があったので、本当に盛り上がってよかったな。本当に嬉しかったね」と笑う。
みんなが楽しく働けるような環境を作るため、様々な取り組みを行った結果、昨年度の離職率は過去最低となった。
同院は看護専門学校を持つ。院長は学校長も兼ねている。「最近、少子化で看護学校の入学者も減少している。地域の人に病院あるいは看護学校を知ってもらい、看護師を志す人に来ていただきたいと思っています」。学長自ら先生として教壇に立つ。「教科書を読んでいても医学用語が並んでいるだけだから、教科書を見るだけでは絶対理解できない。それをどうやって噛み砕いて説明するか、ということで苦労しています」。
文化祭や七夕コンサートではスタッフや生徒に交じってパフォーマンスを披露する。場を盛り上げようと誰よりも楽しく踊る院長の出演で、会場は大いに盛り上がる。「お調子者なんですよ。若い頃から忘年会では宴会部長でいろいろ踊ってましたし。僕なりの看護学生たちへのエールのつもりです。でももうちょっとカッコいいところ見せたいし、ダンス習いに行こうかな?」と笑う。
三重大学医学部卒業後は三重大学第一外科(現在の肝胆膵・移植外科)に入局した。1999年から同院に赴任。10年間外科医として研鑽を積んだ。新しいことにチャレンジしていくことが好き。当時黎明期であった内視鏡手術をいち早く導入し、可能な限り研究会や学会に出席し、技術をマスター。県の内視鏡手術の先駆けとなった。
今チャレンジされていることは?と聞くと「院長職」と即答。「こちらへくるまで病院の経営なんて何も知らなかった。経営だけではない。ハラスメントや医療安全などいろいろな課題があって奥が深い。そのうえコロナや災害など次から次へと難しい課題がふりかかります。難しいですがやりがいがあります。みんなが活き活きと働ける職場にしていくことが私の使命です」。
「スタッフは厳しいコロナ禍を乗り越え、たくましく成長しています。ますます地域の医療機関や住民の皆様から信頼される病院となれるよう、診療機能や医療の質を高めていきたいと思います。これからも救急医療、周産期医療、がん医療など地域に求められる医療をしっかりと支えていきます」と力を込めた。