山形県の吉村美栄子知事は2017年4月18日の記者会見で北朝鮮を巡る情勢の悪化を踏まえ、弾道ミサイルの落下を想定した住民の避難訓練を行う意向を表明した。
これに先立つ3月17日、秋田県男鹿市北陽小の児童らが避難訓練を実施している。この時の写真を見ると児童らは運動場を私服のままで頭部には何も被っていない。弾道ミサイル攻撃やテロ発生時の身の守り方や情報伝達の仕組みを説明した内閣官房の「国民保護ポータルサイト」の閲覧件数が急増しているという。以前は月十万件程度だったのが、この4月は18日までに二百五十万件を越えているという。また政府は住民避難訓練を行うよう要請している。
さて、ポータルサイト上では「警報が流れたら、頑丈な屋内や地下に退避すること。地面に伏せること。屋内では爆風で割れたガラスを避けるため窓から離れること。〔この指示など先の戦時下の日本と少しも変わらぬ〕。自動車の場合は停車して、屋内に非難すること。高速道路など車外が危険なら、停車して姿勢を低くすること。近くに着弾したら、口と鼻をハンカチで覆い、密閉性の高い室内や風上に非難すること。〔著者注。「口と鼻をハンカチで覆う」とはミサイルがサリン弾等化学兵器や細菌弾などということを想定してのことであろう。それに通常の破壊を目的とする爆薬でも殆んど役には立たないと考えられる〕。
もし核弾頭だったら、広島や長崎の惨状をみれば、政府の言う避難訓練など何の役にもたたない。避難するとしたら地下街か「核シェルター」しかない。日本各地にはミサイルを打ち落とすための「パトロリオットPAC3」が配備されているが、「避難訓練」の必要性を云々するのは、裏を返せば、このPAC3は役に立たないことを意味している。
北朝鮮がミサイルを発射するたび、このPAC3は首相官邸に移動配備されるが、どうにも合点がゆかぬ。単なるパフォーマンス〔演技〕か。政府は東京上空で打ち落とすというのだ。これでは遅すぎる。日本海上空で迎撃する必要があるのだ。総理は自衛隊の総指揮官というが、本気で迎撃のために首相官邸が最適の配置場所だと考えているなら、噴飯ものだ。
ところで、官邸に「核シェルター」が地下にありますか。もし北朝鮮が核弾頭の付いたミサイルの開発に成功して日本国をその攻撃対象としたら、恐らく、東京を始めとする大都市と「原発」を狙うだろう。これが現実となると手が付けられなくなる。その時「国民の生命と財産」をどう守りますか、総理。
雲井 保夫