古代史から現代への変遷を紹介

 郷土史家の浅生悦生さんが昨年12月、「知られざる郷土史3津とその周辺」(A5判360ページ、定価2300円)を発刊した。津市の別所書店で好評発売中。津市文化振興事業活用事業。
 編年体で書かれ、約7千年前の「津のあけぼのー狩人たちの足跡」から現代に至る「平成」、変わりゆく津の景観」に至る上下2段組で25章の力作。
 平成17年に教職を退職して以降、約15年間の市民講座や講演内容を収録したもの。教員となり、郷土会や県文化財保護指導員、県史史料調査員として活動してきた貴重な知見の集積である。
 平成29年(2017)に①が出版されたが、②、③とを稿を新たに重ね、各時代の歴史をさらに深掘りした成果が書き継がれている。
 縄文時代の安濃津。平成10年中勢バイパス建設による発掘での「日本最古の刻書土器の発見」は、美濃屋川左岸の大城遺跡群を若き日から踏査してきた筆者にとって、安濃地域が大きく輝いた時代の発見であった。「安濃津も東海や東日本への門戸であった…。湊には渡来人がいて、倉庫群なども建てられていたのではないか」。筆者の思いは読み手と共に膨らんでいく。
 消えていく「庚申信仰」「地蔵信仰」、「幻の城、木造城」。津藩の献上品だった「津綟子」。久居十二代藩主から本藩の津藩主となり、中興の名主といわれた藤堂藩第十代藩主・高兌(たかさわ)の多くの事績を紹介して、44年の生涯を記している。津の歴史と土地に生きた人々への筆者の深い愛惜を随所に感じることができる。