「原発差し止め判決」の樋口元裁判長
現実離れした原発の耐震設計
大飯原発は405ガル、東日本は2933ガル

 原発おことわりみえの会(柴原洋一代表)は28日(日)、津リージョンプラザお城ホールで、福井県の大飯原発差し止め判決を下した福井地裁裁判長(当時)樋口英明さんを講師に招き、講演と対談を行った。約600人が参加して熱心に講演と討論に聞き入った。
 樋口さんは冒頭「私の出した判決を覆す判決が昨年7月に高裁で出ました。できの良い判決なら何も言いませんが、国民の安全にかかる重大な認識の過誤ある。司法界のタブーを破って原発の危険性を訴えていく」と話し、「福島原発はマグニチュード9という、とてつもなく大きい地震に襲われた。揺れの強さは500~600ガルだった。Mは地震の大きさ、ガルは揺れの強さを示す。岩手宮城内陸地震は4022ガル、東日本大震災は2933ガル、熊本が1740ガルだった。大飯原発の耐震設計は405ガル。コンピューターで設計した耐震予測で、現実に発生した地震と大きな開きがある。強震動予測に基づいているとある電力お抱えの者は言うが、一般建物には怖くて使えないという建築関係の学者の指摘がある。ちなみにMホームは3406ガルの耐震設計で、何度も実験した上の設定だ。どちらを信用しますか?」と問いかけた。
 「火力発電所は火を消せば止まるが、原発は冷やして、閉じ込めないと止まらない。福島1号機は非常用電源が1つは地震で止まり、残り2つは津波でダメになった。圧力を逃がすベントが抜けずに、爆発するところが、圧力釜の底が弱かったの下に抜けてメトルダウンに至った。爆発していれば半径250キロ圏は避難地域になる。東京・関東圏がスッポリ入る。死の灰で東北全滅の危険性があったが、西から東への強風で灰は海に流れた。
危なかったのは休止中の4号機で、使用済み燃料プールが水がなくなりメトルダウンするところが、隣接する水で満たされた容器が地震でずれて水が流れ込んで助かった。奇跡が重なって被害は押さえられた」と指摘した。
 最後に責任問題に触れ「原発を止めることができるのは①日本原子力規制委員会委員長②総理大臣③電力会社④原発のある自治体⑤裁判所だが、6番目の地元住民が原発を止めたのが三重県の芦浜だ。85万人の反対署名の力。私は、原発の危険性が分かる人間としてこれからも訴え続けていく」と語りかけた。
 講演会後は原発訴訟原告側弁護士・河合弘之さんと「樋口判決の歴史的意義と司法の責任」と題して対談があった。